有事の際、「パニック」にならない自信はありますか?

 

皆さんはコロナ禍になる前から「パンデミック」(感染症等の世界的大流行)という言葉を知っていましたか?
もちろん知っていたよ!という方も多いとは思うのですが、個人的には何かこう、今すぐに命の危険があるなど、もっともっと恐ろしい非日常的な印象がありました。(映画の影響が大きいのかもしれませんが。)
実際に日本で、世界で、本当に多くの方が亡くなっているので、悲しくもあり、恐ろしいことに変わりはないのですが、新型コロナウイルス感染症拡大により、「パンデミック」という非日常の言葉が、今、日常的に存在していることに違和感のあるこの頃です。

改めまして、こんにちは。そして初めまして。江崎です。会社員をしながら、消防団員&防災士として地元で消防活動・防災/減災啓発を行っています。本業であるイベント関係者としての視点、ならびに消防・防災関係者としての視点をミックスしながらお伝えしたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

 

きっと自分は大丈夫だろう。まだ大丈夫だろう。を信じてよいか?

さて、冒頭の「パンデミック」に続いて、「正常性バイアス」というキーワードを考えてみようと思います。Wikipediaには以下のように書かれています。

~~~~~~~~~~

正常性バイアス(せいじょうせいバイアス、英: Normalcy bias)とは、認知バイアスの一種。

社会心理学、災害心理学などで使用されている心理学用語で、自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう人の特性のこと。自然災害や火事、事故、事件などといった自分にとって何らかの被害が予想される状況下にあっても、それを正常な日常生活の延長上の出来事として捉えてしまい、都合の悪い情報を無視したり、「自分は大丈夫」「今回は大丈夫」「まだ大丈夫」などと過小評価するなどして、逃げ遅れの原因となる。「正常化の偏見」、「恒常性バイアス」とも言う。

~~~~~~~~~~(Wikipedia「正常性バイアス」より引用)

コロナ禍において、このワードを見聞きした方も大勢いらっしゃると思います。コロナウイルスの蔓延もまた、正常性バイアスと密接な関係にある災害といえるのではないでしょうか。私は心理学の専門家ではありませんが、災害をテーマとした時に非常に重要なワードとなるため、皆さんにご紹介しています。災害が起こりそうなときや、今まさに災害が発生している最中であっても、多くの人が「自分は大丈夫だろう」という判断により、命を落とされていることは歴史を振り返れば明らかです。

しかし、正常性バイアスは私たちの心のバランスを取るために不可欠なものでもあって、無くすことはできないものです。

ではどうしたらいいのか?

知識を深めて「想像力」を高めること。訓練して「行動できる心身」を育てること、と私はお伝えするようにしています。
防災においては「最悪のケースを想定せよ」と常に言われています。想定するためには、過去の事例を学んだり、最新の科学技術による分析や知見を学ぶ必要もあります。その最悪のケースのイメージを持たずに(知らずに)突然悪い状況に陥ってしまったとき、私たちは「パニック」状態となります。パニックになってしまうと、情報収集能力も判断処理能力も失い、さらに周囲の大勢が同時にパニックになってしまうことで、「まさかそんなことが?」という思いもよらない悲劇が起きてしまいます。

見方を変えると、想像力と行動力を身につけていれば、被害を最小限に食い止めることができるのではないでしょうか。

 

パニックのプチ体験をしてみよう

さて突然ですが、ここでひとつゲームをしようと思います。
(…いま皆さんはコラムを読まれているので、ゲームをしている様子を想像してみてください)

私とあなたでじゃんけんをします。あなたは『後出し』して、私に『勝って』ください!

(わたし)じゃんけんポン!
(遅れてあなたが)ポン!

こんなリズムです。
それでは始めます。

(わたし)じゃんけんポン!  〈グー〉
(あなた)ポン! →     〈パー〉ですよね?

大丈夫ですか?勝ち続けてくださいね。続けますよ。

(わたし)じゃんけんポン!       〈チョキ〉
(あなた)ポン! →          〈グー〉ですよね?

まるで認知症のテストのようだとよく言われますが…。いかがですか?何度繰り返してもあなたが勝ち続けることは簡単ですよね。

では次です。同じく後出しじゃんけんなのですが、今度は、あなたは『後出し』して、私に『負けて』ください!

いきます!

(わたし)じゃんけんポン!   〈グー〉
(あなた)ポン!?



すぐに〈チョキ〉が出ましたか?

実際には、これを複数回繰り返し続けます。
お疲れ様でした。イメージじゃんけんにお付き合いいただき、ありがとうございました。

©浦和区防災アドバイザー協議会

 

実はこれは、防災訓練や防災講座などをする際、私と多数の住民の皆さんとで一斉に行うものです。後半の負け続けてもらう時、なぜか勝ってしまう人続出で皆さん大笑いです。そしてそのあと以下のようにお伝えします。

「後出しで負けるという時に、間違って勝ってしまった方が大勢いましたね。なぜ間違って勝ってしまったのでしょう?」

「今皆さんには『パニック状態』を実体験してもらいました。普段、じゃんけんでは勝つものだという想いがとても強く染み込んでいますね。でも後半戦では『負け続ける』という非日常のミッションが与えられました。」

「その結果、多くの人の脳が小さなパニックを起こして、『いつも通り』無意識に勝ってしまう方がたくさんいらっしゃいましたね。」と、このように、解説をします。

これは読むよりも、実際にやってみた方が分かりやすいので、ぜひ近くにいる人に声をかけてやってみてください。本当に結構皆さん間違えて勝ってしまいます(笑)

 

冷静さを保つために

非日常のミッションが与えられた時に、どのような反応をするのか体験していただきました。災害現場や防災活動の場に限らず、人が集まるイベントの場において非日常的な事象が生じた時も同様です。

「まさかそんなことが?」とならないよう、<パニックは起きやすい>と理解したうえで、

1.冷静に事象の確認をする
2.最悪な状態の回避を考え判断する
3.経過と変化を視野に入れ速やかに行動する

という流れを、予め想定しておくことが求められていると思います。
イベント=人の集いの<作り手>にも同じことが求められているのではないでしょうか。想像力豊かに様々な想定を予め行っておくことで、<安全・安心>な場を提供できるものと考えています。成し遂げたい想いを持つ主催者、支える側の企画運営者、出演者・舞台の裏方、そして参加者・視聴者など、<人の集い>に係る全ての方々と「集まり方改革編集部」を通じて<よりよい集い>について考えていけたら幸いです。

 

 

この記事を書いた人

江崎孝太
現役消防団員・防災士。ムサビOBのクリエイティブ職。密かにはまっているのは、河原の石を絶妙なバランスで積み重ねるロックバランシング→難しい!
もうひとつは、川底の粘土で粘土細工。コネコネと時を忘れてつくり続けています。いずれは土器をつくってみたい。そんな日々を送っています。

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