担当者目線で社内行事のリアル・オンラインの開催基準を考える
「会議・セミナーはオンライン」を疑え
オンラインイベントが浸透していくとともに、開催のノウハウやメリット・デメリットが整理されてきました。同じくイベントの効果を高めるためにオンライン向き・リアル向きのイベントについても、日常的に意見交換が行われています。
一方、規模や形式でリアルかオンラインを分類しようとする考えに若干の違和感も覚えてもいます。私が会議・集会形式のイベントを多く担当しているため、「会議やセミナーはオンライン」と割り切られることへの違和感とも言えます。会議といってもその目的や狙いはさまざまです。主催者の目的や狙い、期待する効果を軸に整理した方がしっくりくる気がします。今後、リアルとオンラインを判断していくためにも、担当者目線で整理しておこうと思います。
イベントはコミュニケーションツールですので、「何を伝えるか」「どうやって伝えるか」が大枠になります。横軸には伝えることを設定し、左に情報、右に感情としました。左に行くほど事実そのものの比重が大きく、右に行くほど感覚に訴えかけるものの比重が大きくなるイメージです。縦軸には伝え方を設定しました。下は一方通行での情報提供であり、上に行くほど共有により内容を確認していくイメージです。一般的には下に行くほどオンラインが向いていると考えることが出来ます。
「情報を提供する」エリアで真っ先に思い浮かべるのは会議やセミナーでしょう。先ほど割り切られることに違和感があると書きましたが、それでもこのエリアから考えると整理しやすいです。では、情報を提供する目的、具体的に言えば主催者の本音は何でしょう。世のため人のために会社のノウハウを社会に広めたい純粋な想いでしょうか。この場合はオンラインで頻度よく開催することで目的達成に近づけるでしょう。
もっと言えば、イベントとしてリアルタイムでオンライン開催する必要もないかもしれません。不慣れな配信運営をしながら時間配分も気にして行うよりも、事前収録したものを配信した方が参加者の満足度は高くなるように思います。「質疑応答に価値がある」と考える人もいるでしょうが、これも自己満足と割り切れます。話の筋の見えない質問とそれに対する曖昧な回答をありがたがるよりも、セミナー終了後に質問を受け付け、開催報告に整理された質疑応答を加えた方がよいでしょう。
一方、ターゲット層を集めたい、特に確度の高い見込み顧客を集めたい場合、提供したいのは信頼や安心、好奇心などの感情面とも言えます。そうなると、スピーカー、運営レベル、参加者など、その場の雰囲気を総合的に判断できるリアルの方が向いています。もちろん、オンラインでも一定の効果を出すことはできますが、リアルの方が伝わってほしいこと、感じてほしいことを簡単に伝えることが出来ます。
さらに、参加者の意識や行動を大きく変えたい場合、主催者・登壇者の想いを自分ごととして共有してもらう必要があります。話し手と聞き手、参加者同士の関係で構成されるその時の空間自体がコンテンツになるので、「感情を共有する」エリアになります。画面越しでも想いを共有できると思う人もいるでしょうが、スピーカーやテーマのインパクトが強い場合に限られるように思います。
「情報を共有する」ものとしてグループワーク等に軸足のある研修が挙げられます。参加者同士が気付きや学びを確認し合いながら進めることで学習効果を大きくしていきます。この場合、複数の会話が同時に進められ、自然と切り替えながら進められるリアルな場が適しています。他にも記者会見のように質疑応答で事実を確認していくものも含まれるでしょう。会見によっては感情的になる場面もありますが、それは感情の共有ではなく、事実確認のためのプロセスと考えられます。
社内の本音で会議形式を見直す
社内会議を想像してみましょう。決定事項を伝えるだけであれば、費用をかけ、時間を合わせて会議を設定する必要もありません。通知文書を配信すれば目的は達成します。同時に伝えることに意味があるならばオンライン会議で十分です。ただし、参加者の多い社内会議での説明者は孤独になりがちです。参加者も会議進行を邪魔してはいけないと思うからか、リアル開催の時以上に無反応であることも多いです。それは、事実以上のものが伝わりづらいことの表れかもしれません。
経営計画の発表や社員表彰などは、その事実を伝えること以上にモチベーションの向上が重要になります。より多くの人がその場を共有することで効果も高まるため、時間と費用のバランスを考えたリアル開催が望ましいです。スピーカーが社内で影響力の大きい存在である場合や行事自体がモチベーションとなるならば、社内に配信すればいいわけです。その場合でも社員がそれぞれのタイミングで視聴するよりも、同じタイミングで視聴する方が効果も高まるでしょう。
逆にいうと、コストが低いからといって全社配信を行っても、受け手に興味がなければ見ない、見ても関心がない状態です。全社配信したいのであれば、見たいと思わせる要素を増やさなければ期待する効果は得られないでしょう。視聴を強制すれば、結果として時間泥棒になってしまいます。配信すればOK、見ない方が悪いという考え方は自己満足でしかありません。長時間の動画になるようでしたら、ダイジェスト映像にまとめて配信した方が視聴数も視聴効果も高まるでしょう。
現在、ほぼオンラインに移行してしまった会議や研修について、それ自体の目的を達成するのであればオンラインのままで十分だと思います。しかし、担当者として、参加者として本音を言えば、休憩時間の雑談や終了後の延長戦が本当の目的だったりもします。行事単体で判断するのではなく、行事に伴う行動の中から何を感じて、どうなってほしいのかを考えると本当の選択肢が見えてきます。また、名称としては同じ会議・行事だとしても、リアル・オンラインでその目的や期待する効果を変えていくことが必要になってくると思いました。
この記事を書いた人

千葉県出身。2001年セレスポ入社。サステナビリティを軸とした組織づくり、人材育成、PR、IR、CSRに取り組む。サステナブルな生き方を目指し、「正しさよりも楽しさ」をテーマに活動中。人見知りなのに人前で話す機会が多いのが悩み。
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