ユニバーサルなオンライン・イベント

障がいの有無・年齢・性別などに関わらず、より多くの方が安心して安全・快適に参加し一緒に楽しめるように、ユニバーサルデザインやバリアフリーの考え方を生かした工夫や配慮がなされているイベントはユニバーサルイベントと呼ばれます。このユニバーサルイベントの考えを取り入れたオンライン・イベント『オンライン・ユニバーサルキャンプ』が10月24日・25日の2日間で開催されました。(主催:NPOユニバーサルイベント協会/東京都港区  代表:内山早苗)

 

ユニバーサルキャンプとは毎年、八丈島で開催される3日間のキャンプイベントで、ダイバーシティ&インクルージョンをテーマに障がいの有無・年齢・性別などに関わらず多様な参加者がキャンプを通じた実体験を通して、よりよい社会づくりに向けた気づきやヒントを得ることを目的としています。今年は新型コロナウィルスの影響を受け、はじめてのオンラインで開催されました。

オンライン開催に向けた課題のひとつが、多様な参加者に対する情報保障です。聴覚に障がいのある参加者には手話通訳に加えて、音声をテキストに変換する『UDトーク』というアプリを活用。このアプリを使用することで司会者や他の参加者の発言内容をLIVEで視覚(文字)情報として伝えることができます。

使用する環境や機材、扱いの不慣れなどによる誤変換など生じることもありましたが、全体を通して聴覚に障がいのある参加者も画面越しの笑顔から楽しんでいるのが伝わってきました。

また、視覚に障がいのある参加者には、出来るだけスライドを読み上げ、写真や動画の情景を説明することで、同じ場を共有するというイベントの醍醐味を失わない様に工夫がされていました。

オンラインにより、リアルイベントでは何かしらの理由で参加や来場に不安・負担がある方の心配なども軽減され、さらに毎年キャンプを開催している八丈島や米国在住の方など、遠方や海外からも気軽に参加が可能となり、より多くの方にイベントを楽しんでいただける機会となりました。

スタッフの中には障がいのある方も企画・運営などに携わっています。聴覚に障がいのあるスタッフはUDトークの誤変換修整を担当し、外出や移動における困難や不安・負担のあるスタッフは自宅からリモートで運営をサポートするなど、アプリやオンラインを活用することで個人の能力をより発揮しやすくなったことも印象的でした。

今回のイベントを通じて『人と人とのつながり』『時間や場の共有』『双方向のコミュニケーション』『活躍や能力発揮の場』という、イベントの持つ本質を体験することができました。

 

主催者からのコメント:NPOユニバーサルイベント協会 理事長 内山早苗 氏
15年続けてきた『ユニバーサルキャンプin八丈島』もコロナ禍で中止に。何とかできないかと『オンライン ユニバーサルキャンプ』の実施を決定。中心になったのは、キャンプに参加したあと協会活動に賛同したメンバーたちです。障がいの有無に関わらず、互いに遠慮せず積極的に役割を分担し、全うしてくれました。参加者も実に多様な方たちで、まさにダイバーシティ&インクルージョンを体現できたイベントでした。
突然に社会の状況が大きく変化し、多くの人が一堂に会すことが難しい現在、オンラインでのコミュニケーションの可能性が見えてきています。一方で、オンラインの普及によりダイバーシティへの配慮が見落とされている様子も伺えます。今回のオンライン ユニバーサルキャンプでは、いかに誰も排除しない方法で行うかを、高年齢や障がいのある当事者と一緒に検討し実施できました。今後は八丈島でのリアルなキャンプを通じた実体験に加えてオンラインを取り入れることで、これまで以上にダイバーシティ&インクルージョンなイベントとし、社会に広げることに取り組んでいきたいと思います。

参加者からのコメント:中国出身大学院生
一番面白かったゲームはユニバーサルスポーツゲームです。歌を歌いながら、三種類のイカのポーズをするゲームです。みんなが歌を歌いながら、体を動かしたのはすごく楽しかったです。ただ、『すごろく』のゲームでは、ルールが上手く周知されずに物足りなさも感じました。この二日間、みんなとの出会いは最高です!すごく楽しかったです。来年もぜひ参加したいです。もし、八丈島に行ったら、みんなともっとコミュニケーションしたいです。

参加者からのコメント:聴覚障がい者
グループワークでは、チャット機能を活用することで、話し合いの内容をまとめ、話の流れについていくことができたので、誰が何を話しているのか十分に理解でき、様々な国籍や特性の人々の考えに触れ、楽しむことができました。UDトークや手話通訳も配置されており、情報保障に対するスタッフの配慮が感じられるイベントでした。

 

過去のユニバーサルキャンプの様子
  

  

 

この記事を書いた人

犬塚圭介
株式会社セレスポ サステナブルイベント研究所 所長

 

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