ビジネス展示会の新しいかたち ~オンライン×リアル展示会の可能性~
|ビジネス展示会の現況
ビジネス展示会といえば、おおきな会場に多くの出展者と来場者がつどう巨大な商談空間。関東圏だと東京ビックサイトや幕張メッセ、パシフィコ横浜など大型イベント施設で、毎週のように多種多様な展示会が開催されていた。
だが2020年3月頃からコロナの感染拡大にともない、展示会はのき並み延期・中止となった。展示会が担ってきた役割を消さないため、主催者はオンラインでの代替開催を進めてきたが、2020年後半からコロナ対策を行ったリアルでの開催も再開。それから1年、着々とオンラインとリアルそれぞれの開催実績が積み上げられてきた。そんないま、あらためてWith・Afterコロナでの展示会を考えてみたい。
|「エコプロ」について
2021年12月8日(水)~10日(金)の3日間、東京ビッグサイト東ホールで「エコプロ2021」が開催された(主催:一般社団法人サステナブル経営推進機構、日本経済新聞社)。
エコプロは1999年から毎年12月に開催されてきた、「環境」にテーマをおいた展示会である。小・中学生が社会科見学もかねて展示会を訪れるため、出展者の展示内容が分かり易く、また子供たちが楽しんで展示内容を理解できるようなブースになっていることが大きな特色と言えるだろう。出展者の業界も多種多様で、日常生活に根付いている商品のメーカーが大きなブースを構えているのが目立つ。商談も含め、企業PRの場所として多くの来場者・出展者でにぎわう展示会だ。
2020年12月、エコプロはコロナの感染状況をふまえ完全オンラインで開催され、2021年はオンラインとリアルのハイブリッド開催となった。ハイブリッドでの展示会の開催について、今回エコプロの運営をされていて、他にも数々の展示会などで実績を持っている、株式会社日経イベント・プロの林さんにお話を伺った。
|セミナーはオンラインで配信!?
「エコプロでは、セミナーはリアルとオンラインで開催している」と林さん。展示会をリアルで開催する際に、セミナーは著名人や財界人に登壇してもらうことで、より多くの人に現地に来てもらう誘導材の役割を担っている。
そのセミナーの役割がオンラインに移行している理由は、まずオンライン上での視聴自由度の向上、そして会場で1カ所に大人数が長時間滞留し集うことの回避である。
オンライン開催でも、セミナーはサイト誘導の役割を果たすとともに、加えてアーカイブ配信することでより多くの人の視聴が可能となった。そして、会場では密を避けるためにセミナースペースを小さくすることで、通路・動線を広げることができ、またブース数が増えることによって、リアルな展示会ならではの偶発的なつながり創出の機会が増えることになる。
|オンライン展示会のメリット
オンラインでの展示会の大きな利点は、
時間と場所を選ばないこと。遠方から出展・来場どちらも可能となる。またオンラインの開催期間はリアル会場よりも長いため、来場者はより自由に展示会に参加することができる。
そして林さんは運営の立場から「中小企業であってもページの内容を充実させることで、大企業に遜色ないページにできる」と気付いたそう。リアルな会場だと、目を引くブースにするために物理的な装飾が必要だったが、オンラインであれば印象的な画像や映像を使用すれば目を留めてもらえる。つまり、出展する側の労力は要するものの、費用はかけなくても見栄えのある出展者ページをつくることができ、リアルでの絶対的な差をなくすことができるのだ。
|リアルな会場は、より珍しく、楽しく
私が今回エコプロに行き残った印象として、「掘り出しもの感」がある。あくまで体感だが、以前に比べると小さいブースが所せましと並んでいて、通り過ぎようとしたブースの前で思わず目を奪われたり、思わぬ発見につながった。どの展示会でもいえることだが、特にエコプロが「環境」というテーマを扱っていることで、小規模でも環境活動を行う団体・個人が展示していたことも一因だろう。リアルの開催がエコプロの醍醐味だとあらためて感じた。
オンラインでは出展者情報を検索して絞り込んで閲覧することが出来るのは便利である反面、絞り込みから漏れた情報にリーチする機会は少ない。その点で、リアルな会場では来場者が目と耳を使いながら回遊するため、新たな発見につながる効果が大きいだろう。
|オンラインとリアル、いいとこどっていこう
この2年、展示会がオンライとリアルで開催されてきたことで、両方のメリット・デメリットが主催・運営側、そして出展者・来場者にも徐々に見えてきたように感じる。そして展示会の目指すかたちはひとつではなく、出展目的や業界によって異なってくるようだ。今後主催者は、出展者や来場者の様相に合わせて開催方法を検討することがより求められるようになるだろう。オンラインとリアルのそれぞれの良さを組み合わせながら、人と人のつながりをつくり出す展示会のかたちをこれからも考えていきたい。
この記事を書いた人

スポーツ全般観るのもやるのも好き。超雑食系サブカル女子。オリンピックを観戦して、気が付けばアスリートを保護者のような気持ちで見守っていることに驚愕。大学までやっていた馬術、馬文化について広めていきたい。
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