「災間を生きる」私たちに必要なこと 〜フェーズフリーレポートin東池袋〜(前編)
私の勤務先から徒歩15分程度という、近くにあるのになかなか行くチャンスがなかった<防災士が気になる公園!>「イケ・サンパーク」に行ってきました。場所は、東池袋。サンシャインのバスターミナルからすぐのところです。併せて乗車・見学したいと思っていた、電気バス「IKEBUS」(イケバス)にも乗ってきたのでレポートします。
※「IKE・SUN PARK」(イケ・サンパーク)は愛称で、正式には「としまみどりの防災公園」といいます。文中は「イケ・サンパーク」と表記しています。
― 地域住民の熱い想いが、憩いと安心・安全の公園を生んだ。 ―
イケ・サンパークがある場所は、昭和14年から貨幣・勲章の製造、貴金属製品の品位証明等を行っていた造幣局東京支局があり、工場や博物館等が建つ約3.2haの広大な空間でした。昭和59年、地域の方々による土地・空間の有効活用を求める声があがり、当時の大蔵大臣に10万を超える署名を集め、要望を送ったそうです。その後、長い年月を経て平成28年に造幣局がさいたま市に移転。
そして、生活者の声を活かしたまちづくりが本格化し、東京都市計画や豊島区都市計画そして国の防災施策などとも連携し、ついに令和2年に防災公園として生まれ変わりました。生活者の強い想いと、公共の力がタッグを組み、魅力と安心がぎっしり詰まった大都市の防災公園を生んだなんて、胸が熱くなります。
(参照:イケ・サンパーク 概要ページより)
大都市の中のオアシスですね
公園全体MAP:このMAPの青地白文字部分は主な防災機能!この他にもたくさんの災害対応の工夫が組み込まれているとのこと。そして中央の四角はなんと、ヘリポート機能らしい!すごい!
― 散りばめられた防災機能をレポート ―
最初に目に飛び込んできたのは立派な通路とイチョウ並木。普段は後述する電気バス「IKEBUS」の路線(写真右端部分)にもなっているのですが、このプロムナード(通路)は、非常時に支援物資を運ぶ大型輸送トラックなどの通過にも耐えられる構造になっているのだとか。そして物資を受け取ったら、次は配る必要もあります。イケ・サンパークは、支援物資の物流拠点にもなるんですね。
園内には、大きな庇(ひさし)が特徴のカフェがあります。このカフェ、普段はのんびりと或いは賑やかに、公園でのひと時を過ごす居心地のいいカフェなのですが、非常時には、大きな庇を有効活用し、炊き出しはもちろん、非常用公衆電話の設置、災害時の情報共有の場としての機能も持ち合わせています。
その裏手にある施設は、平時・緊急時双方のさまざまな資器材を格納している大型の備蓄倉庫です。屋根はソーラー発電システムを採用し、平時は園内照明、非常時は停電時の照明用電源として機能します。また、倉庫には入口のような凹んだ箇所があり(低い構造部分)、普段利用できる園内公衆トイレの他に、大型イベント等で利用できる臨時トイレが15室も!しかも井戸水を利用しているので・・・、もうお分かりですよね。“非常時でも使えるトイレ”ということで、避難してきた方々のために開放されるそうです。
非常時のトイレというと、仮設・簡易なモノが多くなってしまいますが、こちらは非常時でも井戸水による水洗式です。資料で内部を見ましたが、内装は明るくさわやかでトイレそのものも清潔感があり、非常時でも安心できる空間作りが行われていることがわかりました。
この日は日差しも強く気温も高かったので、ちょっと疲れてきました。そんな時、備蓄倉庫を抜けたところにちょうどベンチが。ではちょっと失礼してひと休み・・・。あれ?ベンチに鍵がかかっている?これはもしや!!??
演技が下手でスミマセン。こちらは座面部分が跳ね上がるタイプで、内部に金属製のカマドが格納されているカマド・ベンチです。炊き出しなど、火を扱う際のベースになりますね。
ところで、「カマド・ベンチ」って実は近年、採用が増えている設備で、皆さんの身近な公園にもあるかもしれません。構造はさまざまなので、パッと見ただけでは気づかないこともあります。この写真とは違うタイプもたくさんあります。身近にある公園での防災訓練などに参加してみると普段と違う公園の機能に出会えるかもしれません。
ベンチの向かい側(先ほどのカフェと繋がった部分)には、普段から使用できる公衆トイレと非常用発電室があり、そのすぐ横にたくさんの花が咲いていました。水をやる親子の姿にほのぼのしながら花に近づいてみると、マリーゴールド、向日葵にダリア…、ん?よく見てみると…。茄子・紫蘇・里芋・フキ・バジル・スイスチャードなどなど、おいしそうな野菜たちが育てられているではありませんか!貼り紙には「イケ・サンパークのコミュニティガーデン」「自分たちが食べるものを、自分たちの手でつくる。体験・実践スペース」とあります。公園の一角で花を植え、野菜を育て、それを食べるなんて、自分が今池袋にいることを忘れてしまいそうです。
植栽にも知恵が注がれているというので、木の多いエリアへ。シラカシが多く植えられているとの情報が。なぜシラカシ?と思い調べてみました。シラカシは樹木の中でも燃えにくい性質があるということで、公園において「防火樹林帯」の役割を果たしているとのこと。
実は、公園の南東方面には人口密度の高い“木密地域”(木造住宅密集地域)が広がっていて、大規模災害や火災が発生してしまった場合、延焼スピードが早いといわれています。そんな時、身を守るために公園などの広い敷地が有効なわけですが、その避難場所となる公園の安全性を増すために「防火樹林帯」としてシラカシが選ばれ、植えられているそうです。木に囲まれた素敵な散歩道は、日陰をつくる機能や防音機能に加え、こんな重要な役割があったんですね。
公園中央の芝生広場に来ました。こどもたちが走り、賑わいと憩いの空間が広がります。冒頭の公園MAPで触れましたが、中央部分はヘリポート機能があるらしい…。広い芝生のどこがヘリポートなんだろう?とウロウロしていると、ありました!L字型のマークが埋められているのを発見!ちょっとうれしくて、独りでニヤリとしつつカメラでパシャ!(あやしい人と思われたかも…)非常時には、物資輸送や救急搬送など、ヘリコプターには多くの役割がありますね。頼もしいかぎりです。因みにもう一枚は、実際に自衛隊ヘリが離着陸した際の写真を入手したのでご紹介まで。やっぱり迫力あります!
2020.11.14.豊島区主催「防災機能展示会inとしまみどりの防災公園」より
非常時の安心機能、次は「水」です。水には大きく分けて2つの役割があります。ひとつは私たちの身体に必要な飲料水。もうひとつは飲まないけど使いたい水。「雑用水」とか「生活雑用水」と言われるものです。そして、飲まない水にはもうひとつ別の役割があります。それは「消火用水利」です。前述した“木密地域”で大規模災害や火災が発生してしまった時に速やかに消火に当たる為の設備となります。
飲料水の貯水量はなんと100トン!新鮮な状態で蓄えられているとのこと。
生活雑用水並びに、消防水利として使用可能な深井戸。
芝生には多種多様なマンホールが!遊ぶときはちょっと気を付けよう!
冒頭のカフェの他に、小型店舗もありました。「KOTO-PORT」(コト・ポート)と呼ぶそうで、新たに事業に挑戦したい方を公募して運営しているのだとか。お店のおいしそうなメニューや笑顔は、チャレンジ精神が溢れているんですね。
さてその店舗。よく見ると、タイヤやナンバープレートが見えます。そう、トレーラーハウスなんです。設置されていたのは大型輸送車が通行可能なプロムナード(通路)沿い。非常時は、移動させることも可能なのが判ります。店舗裏側には、プロパンガスなどがあり、水道・電気は公園のアウトプット設備に接続されていました。これら公園のアウトプット設備は、園内に複数あり、平時は小型店舗やイベント用電源として使用され、非常時は非常用発電機により災害対応活動にも使用されます。
限られた訪問時間で全ての紹介には至りませんでしたが、イケ・サンパークのさまざまな防災対策設備・機能を駆け足でご紹介しました。私の率直な感想は、気持ちの良い広い空、憩いの空間、イベントも楽しそう! そして、困った時には頼りになる! むむむむ。もっと深く知りたい!です。
皆さんも東池袋周辺にお越しの際は、ぜひ!お立ち寄りください!
解りやすい紹介動画もありますので、公式ホームページも併せてご覧ください。
イケ・サンパーク オフィシャルHP
(後編「IKEBUS」レポートへ続く)
この記事を書いた人

現役消防団員・防災士。ムサビOBのクリエイティブ職。密かにはまっているのは、河原の石を絶妙なバランスで積み重ねるロックバランシング→難しい!
もうひとつは、川底の粘土で粘土細工。コネコネと時を忘れてつくり続けています。いずれは土器をつくってみたい。そんな日々を送っています。
同じカテゴリーの記事を読む
-
2022.03.18行動指針に繋がる道標をさがせ! ~ カレンダーから読み取る明日への扉 ~
-
2022.02.15ビジネス展示会の新しいかたち ~オンライン×リアル展示会の可能性~
-
2021.12.15人が集まる地域が上位に来るの?? 都道府県魅力度ランキングについて